これまでに読んだ動物に関する本

イヌは愛である 「最良の友」の科学

クライブ・ウィン著 梅田智世 訳
早川書房
2021年5月25日発行

人間にとって、あらゆる動物の中でも特別な存在といえる犬。その犬に関する研究は進んでいるものの、これまで科学の分野では、犬の持つ感情について積極的に取り扱うことは避けられてきました。本書は、犬の行動、神経やホルモン、遺伝子のしくみ、人間と犬の関係が生まれた起源、個々の犬の生まれてからの経験がおよぼす影響など、様々な観点から最新の研究を紹介し、犬の本質は愛であり、人間を愛し、愛されたいという欲求を持っていることを科学的に解き明かしていきます。そのうえで、著者は、現在の犬を取り巻く環境が抱える問題を指摘し、深い愛情をよせる犬には、もっと豊かで満たされた生活を送る権利があり、人間にはその責任があると訴えます。ページの端々から動物認知科学の第一人者である著者の犬に対する深い愛情が感じられる一冊です。
原著「DOG IS LOVE: Why and How Your Dog Loves You」(2019年)

犬はあなたをこう見ている 最新の動物行動学でわかる犬の心理

ジョン・ブラッドショー 著 西田美緒子 訳
河出文庫
2016年5月20日発行(文庫本)

原著は「Dog Sense: How the New Science of Dog Behavior Can Make You A Better Friend to Your Pet」(2011年)
長い間、犬を飼っていても、犬のことを本当に理解しているとは限りません。ややもすると、犬のことを人間と同じように考えてしまいがちですが、なかには、犬にとって的外れなこともあるのではないでしょうか。この本では、イギリスの人間動物関係学者である著者が、科学的な研究や実験を交えて、犬の起源と進化の歴史、祖先であるオオカミとの違いや犬の持つ知力や知覚能力、感情などについて紹介するとともに、正しいしつけの在り方や、理想的な容姿を追求して犬種のグループ分けが行われ、純血種が作り出されることによる問題についても述べています。
今や人間とって欠かせない存在である犬が、これからも人間の傍らで幸せに暮らしていくためには、「犬とは本当はどんなもので、犬が本当に必要としているものは何か」について正しく知ることが、欠かせないのだということを実感させられました。犬とより良い関係を築きたいと考える人には、お薦めの本です。

猫的感覚 動物行動学が教えるネコの心理

ジョン・ブラッドショー 著 羽田詩津子 訳
ハヤカワ・ノンフィクション文庫
2017年6月17日発行(文庫本)

原著は「Cat Sense: The Feline Enigma Revealed」(2013年)で、上述の「犬はあなたをこう見ている 最新の動物行動学でわかる犬の心理」に続き、人と猫のより良い関係が築かれることを願い書かれた本です。
今や世界中で、猫は、人間の長きにわたる友と言える犬よりも多く飼われています。しかしながら、これまで猫については、犬と比べると科学的な研究が進んでいなかったこともあり、知られていないことが多々あります。この本では、身近な存在でありながら謎に包まれた猫について、野生から進化した1万年の歴史とその過程での人とのかかわり方、猫の知覚や思考と感情、社会とのかかわり方について明らかにするとともに、未だ野生の性質を残す猫の未来のあり方について、著者の考えが述べられています。この本を読むことで、犬とは全く異なる進化や人との関り方をしてきた猫への更なる興味と愛着が強く湧いてきます。

北里大学獣医学部 犬部!

片野 ゆか
ポプラ文庫
2012年4月5日発行(文庫本)

青森県十和田にある北里大学獣医学部で学ぶ学生が、動物保護活動を行うために設立したサークルが犬部です。立ち上げたのは、現在、東京都杉並区にあるハナ動物病院の院長で、今も積極的に動物の保護活動に携わる獣医師の太田快作さん。犬部のメンバーたちが懸命に活動する中で、様々な事件が起こりますが、動物を愛する学生たちの試行錯誤しながらも奮闘していくひたむきな姿に心を打たれるノンフィクションです。映画化され、2021年公開予定だそうです。

老犬たちの涙 “いのち”と“こころ”を守る14の方法

児玉 小枝
KADOKAWA
2019年9月27日発行

行政施設に持ち込まれ殺処分となった老犬たちがいます。持ち込まれた理由は、介護が大変になった、最期を看取るのがつらい、引っ越し先でペットが飼えない、飼い主の病気や入院など様々。そして何らかの理由で捨てられた老犬が収容されることもあります。飼い主の都合によって見捨てられ、天寿をまっとうすることができない老犬たちがいるという事実から、私たちは目を背けてはいけないのだと気づかされます。すべての老犬が、家族の愛に見守られながら、心穏やかにその生涯を終えられる日本にいつかなるように、著者の児玉小枝さんが、そう願って書かれた本です。

ドイツの犬はなぜ幸せか -犬の権利、人の義務

グレーフェ彧子
中公文庫
2000年8月25日発行(文庫本)

ミュンヘン郊外の一家が迎い入れたボニー(1986年生まれの雌犬で、シェパードとコリーの血をひいた雑種)の日常を犬の視点で綴った本で、当時のドイツの犬事情がよくわかります。著者は物理学者であるドイツ人の夫と結婚してドイツに渡ったグレーフェ彧子(アヤコ)さん。犬を飼っている人であれば、共感するところがたくさんありますが、ドイツは動物福祉の先進国と言われるだけあって、犬の飼い方について飼い主に厳しい義務が課せられているとともに、犬に優しい社会であることが伝わってきて、うらやましくもあります。

君と一緒に生きよう

森 絵都
文春文庫
2012年9月10日発行(文庫本)

飼い主や繁殖業者に捨てられるなど、過去、過酷な経験をしながらも、幸せをつかむことができた犬たちとこれらの犬たちを救ったボランティアの人たちや里親になった人たち。この本に登場する二十数頭の犬たちそれぞれに物語があります。里親さんに暖かく迎い入れられ、終の棲家を手に入れた犬たちに安堵するとともに、幸せをつかむことが出来た犬たちは、ほんの一握りであって、多くの犬たちは知られることなく短い命を終えている現実があることにも、目を向けなければならないことに気づかされます。本屋さんで何気なく手に取った本なのですが、今思うとこの本に出会わなければ、ゆうと巡り会うことは無かったかもしれません。

保健所犬の飼い主になる前に知っておきたいこと

片野 ゆか
新潮社
2013年8月10日発行

インターネットの普及などによって行き場を失った犬や猫の問題は広く知られるようになりました。保健所犬を飼いたいという人は増えているものの、保健所犬をとりまく独特の世界に不安や戸惑いを抱いている人が多いのも事実です。保健所犬とはどういった犬たちなのか、保健所犬の飼い主になるために知っておくべきことや心構え、60歳以上の人が飼い主となるときに直面する問題などの疑問に対して、犬をこよなく愛する片野ゆかさんが答えてくれます。また、ペットビジネスの実態や自治体の施設や民間の動物シェルターについても詳しく書かれており、現在の日本のペットを取り巻く問題を知ることができます。

ゼロ! 熊本市動物愛護センター10年の闘い

片野 ゆか
集英社文庫
2014年5月25日発行(文庫本)

犬猫の殺処分ゼロに向けて取り組んだ熊本市動物愛護センター職員たちの奮闘を描いた本です。今でこそ殺処分ゼロを目標に掲げる動物行政施設が増えてきていますが、2001年当時、そのようなことはとても実現できるとは考えられていませんでした。それでも職員たちの動物を殺したくないという一念と決してあきらめることのない粘り強い取り組みが次第に形になってきます。また、動物愛護センターだけでなく、動物愛護団体や獣医師などに携わる人々が熊本市動物愛護推進協議会に参加し、立場を越え、目的を共有して取り組んだのも大きかったということがわかります。

世界のアニマルシェルターは、犬や猫を生かす場所だった。

本庄 萌
ダイヤモンド社
2017年5月24日発行

著者はアメリカのロースクールで動物法を学び、帰国後は一橋大学大学院にて動物法学者として研究を続ける本庄萌さん。イギリスでの高校生時代にアニマルシェルターで職場体験をしたことをきっかけに動物保護の道に進むことを決意したそうです。この本では、イギリスのほか、その後訪問した日本、ロシア、アメリカ、スペイン、ドイツ、ケニア、香港、全部で8か国のアニマルシェルターとそこで過ごす動物たち、働く人たちの様子が紹介されています。動物保護の先進国であるドイツやイギリスなどだけではなく、様々な国のシェルターには、その国民性からくる特色があることがわかります。実際に訪れて見聞きしたこと、感じたことが素直に記されており、本庄さんの動物たちへの気持ち、思いが伝わってきます。

動物保護入門―ドイツとギリシャに学ぶ共生の未来

浅川 千尋
有馬 めぐむ

世界思想社
2018年4月25日発行

タイトルに「入門」とあるように動物保護全般を取り上げ、犬猫の殺処分問題と動物実験を中心とした動物保護を巡る日本の現状を伝えています。動物の権利論と動物の福祉論、日本における動物保護に関する法のあゆみ、2012年の動物愛護管理法の改正などについて解説するとともにペットビジネスとその流通に潜む問題にも触れ、行政による殺処分ゼロの達成も手放しで喜べない実情がわかります。また、動物保護先進国であるドイツの保護施設「ティアハイム」と法制度、2004年のオリンピックを契機に首都アテネで野犬の殺処分ゼロを実現したギリシャにおける動物保護の取組みが紹介されており、とても興味深い内容が詰まった本です。

犬を殺すのは誰か ペット流通の闇

太田 匡彦
朝日文庫
2013年7月30日発行(文庫本) 増補版2016年発行

動物行政やペット・ビジネスに潜む問題を取り上げ、これまで不透明であったペットの流通の実態を明らかにした本です。朝日新聞の専門記者である太田匡彦氏がアエラ編集部記者当時に執筆した「犬ビジネスの『闇』」(アエラ2008年12月)および、2010年までに同誌に掲載された太田氏執筆の記事をもとに、単行本「犬を殺すのは誰か ペット流通の闇」(2010年9月)が発行されました。文庫本を発行するにあたっては、単行本にさらにその後の取材を加え、大幅な加筆がなされています。太田氏は、毎年、数万匹の犬が殺処分されている状況が改善されない背景には、想像力の欠如とか弱き命への無関心があると考え、事実を掘り起こし、白日の下にさらすことによって、人々の想像力を補い、関心をかきたてる、そのために書き続けていると記していますが、その熱意が文中から伝わってきます。犬たちが置かれている悲惨な状況を知ることは、辛いことでもありますが、知ることが最初の一歩なのだということを実感します。

「奴隷」になった犬、そして猫

太田 匡彦
朝日新聞出版
2019年11月30日発行

「犬を殺すのは誰か ペット流通の闇」を著した太田匡彦氏が執筆した「『奴隷』になった犬、そして猫」
丁寧な取材によって、知らされていない犬・猫の流通の実態と問題を明らかにし、また、今年6月に成立した改正動物愛護管理法について、「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」の取り組みやペット業界の水面下の動きについても詳細に書かれています。
400頁を超す分量で内容も濃いので、手に取りづらいかもしれませんが、保護犬、保護猫や動物福祉に関心のある人には是非、読んで欲しい本です。犬や猫を飼っている人、飼いたいと思っている人には、この本に書かれていることを伝えたい、知ってもらいたいと思いました。皆が知ること、関心を持つことで、きっと良い方向に向かう、そう信じたいです。

動物たちの悲鳴が聞こえる
続・それでも命を買いますか?

杉本 彩
ワニブックスPLUS新書
2020年2月10日発行

自身が理事長を務める、公益財団法人動物環境・福祉協会Evaを通じて動物福祉活動に積極的に取り組んでいる杉本彩さんの著。新書という限られた頁数の中で、ネット上に蔓延る動物虐待、行政による殺処分ゼロの取組みの問題点、昨年(2019年)の動物愛護管理法改正の評価と課題、ペットビジネスとその流通の闇、視聴率重視で制作される動物番組、動物園における飼育環境問題、畜産動物・実験動物の問題など、実に幅広い分野における動物 たちの過酷な状況を取り上げており、杉本さんの動物たちに対する愛情と悲惨な状況を解決したいという熱い想いがストレートに伝わってきます。また、感情的になり過ぎた怒りのパワーだけでは、世の中は変えられないとも述べ、私たちの一人ひとりの意識、知ること、関心を向けることが大事であるとする考えには全く同感です。

看取り犬・文福の奇跡

若山 三千彦
東邦出版
2019年8月5日発行

神奈川県横須賀市にある「さくらの里山科」は、犬や猫と暮らすことが出来る特別養護老人ホームとして2012年に設立され、テレビその他のメディアでも取り上げられていますので、ご存知の方もいると思います。この本は、さくらの里山科に暮らす入居者とペット、スタッフの間で実際に起きた物語をこの施設の設立者であり、理事長を務める若山道彦氏が描いたものです。犬や猫の持つ不思議な力に驚かされるとともに、ペットと暮らすことの本当の意味に気付かされます。

60歳からも犬や猫と幸せにくらす本

犬と猫とシニアのくらしを考える会 著
角川書店
2018年6月1日発行

いくつになってもこのコといっしょ

徳田 竜之介 監修
小学館
2019年11月20日発行

この2冊はいずれも出版社の企画本ですが、60歳以上のシニアがペットと暮らすことによって得られる効用や、健康面やお金の問題など高齢者がペットを迎えるときに直面する問題と、そういった問題にどのような対処の仕方があるかなどについて書かれています。このような本が出版されるということは、シニアになってもペットを飼いたい、だけど不安もあると悩む人が年々、増えていることを示しているのだと思います。

【番外】

羆撃ち(くまうち)

久保 俊治
小学館文庫
2012年2月8日発行(文庫本)

猟師として生きていくことを決めた著者の狩猟生活を描いたノンフィクション。厳しくも美しい北海道の山々の自然とその中で生きる野生の動物たち、それを追う猟の様子を極めて繊細に描くことによって、読み手をあたかもその場にいるような感覚にさせます。そして、仔犬の時から猟犬として育てたアイヌ犬(北海道犬)のフチについて語られる文脈には、著者のフチへの深い愛情が溢れており、読み進めるにつれて、読み手の心の中にも積もってきます。他に頼るもののない厳しい大自然の中での猟という共同作業によって、言葉や身振りを介すことなく通じ合う唯一無二の関係が築き上げられていく、この本で語られる著者とフチのそんな関係は、これまでに読んだ犬を主人公とするどんな小説よりも鮮烈な印象を与えてくれました。特に日本犬好きの人にはたまらない本であること間違いなしです。