いま、思うこと
前回の記事から1年近く経ってしまいましたが、今回、サイトもリニューアルしたところで、ようやくですが、再開したいと思います。更新は相変わらず不定期となりますが、よろしくお願いします。
この原稿を書いている時点(2023年3月2日)では、環境省による令和3年度の「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」などの統計資料は発表されていませんが、各地の愛護センターや動物愛護団体の現場は依然として、ひっ迫した状態にあります。いまここにある命を救うために、終わりの見えない精一杯の奮闘が続いているのです。
こうした状況を変えていくためには、「いまここ」に対処していくだけでなく、将来を見据えた取り組みが必要となることは言うまでもありません。そしてそれには、犬や猫たちに対する取り組みだけでなく、飼い主となる「人」へのアプローチが重要になってくるのだと思います。結局のところ、問題を引き起こしているのは、犬たちでも、猫たちでもなく、人間なのですから。
愛護センターに収容される犬・猫の数を減らすためには、終生飼養率(飼われている犬や猫のうち、その生涯を通じて飼い主のもとで最期まで暮らせる割合)を高めていくことが必要不可欠になりますが、それには、法律を厳しくしたり、引き取りを制限するだけでは、限界があります。
長い目で見れば、やはり、私たち(=犬猫を実際に飼っている飼い主だけでなく、子供たちを含めた将来、飼い主となるかもしれない人たちすべて)の意識を変えていくための教育であったり、啓蒙活動などに、これまで以上に力を入れていくべきだと思います。
また、収容された犬・猫の譲渡を増やしていくために、保護犬、保護猫の里親となってくれる人を増やす取り組みも重要です。
テレビ番組などの影響もあり、「保護犬」「保護猫」の認知度は、ずいぶんと高まってきましたが、実際に犬や猫を飼う際に、保護犬や保護猫の里親になるという選択肢を選ぶ人は、まだ、そこまで多くはありません。(※ ペットフード協会 令和4年(2022年)全国犬猫飼育実態調査 ペット入手時の情報源・入手先)
ですから、次のステップは、実際に犬・猫を飼おうとなったときに保護犬、保護猫たちを選択する人たちを増やすことであり、そこに力を注いでいくことが大切なのではないかと思います。一つの例としては、「保護犬と暮らすということ」(扶桑社)という書籍は、保護犬を迎え入れた方々の、ありのままの暮らしを伝えることで、保護犬たちの魅力を伝えています。昨年にはVOL.2が出版されましたが、更にこのような取り組みが広がっていけばいいなと思います。
そして、すでに犬や猫を飼っている人に対しては、高齢、病気、怪我等によって、犬・猫の世話が困難になった時に備えて、地域社会の中で支援していくしくみが、間違いなく必要だと思います。
競い合うことによって成長を目指す新自由主義的な社会が、もう一方で、格差、分断、孤立といった問題を生み出してきたと言われていますが、近年、これらの社会問題を解決しようと立ち上がる人たちに注目が集まるようになりました。
社会的に弱い立場の人たちの声に耳を傾け、想像力を働かせることによって、多様性を認め、だれ一人取り残さないインクルーシブな社会を目指すことによって、支え合い、共に成長していく、いわば共生社会を実現しようとする機運は高まっていると感じます。
このような社会の大きな流れの中で、人と犬や猫たちが共生する社会が、将来、必ず実現すると信じて、それぞれができることに対して踏み出していければと思います。