未来を想像して
新しい年が始まりました。年明け1月4日に環境省が発表した統計では、全国の自治体で殺処分となった犬猫は年々減少を続け、2020年度は2万3,764頭(犬4,059頭、猫1万9,705頭)だったそうです。年間で2万頭を超す犬や猫が殺処分されていることは事実として受け止めなければなりませんが、自治体や愛護団体、個人活動家の懸命の努力によって、返還譲渡率(年度内に自治体が引き取った頭数に対して、譲渡もしくは飼い主に返還された頭数の割合)は、犬猫合計で67.6%、犬だけですと85.6%に達しました。
これから先、未来は、どうなっているでしょう。人とともに暮らす犬や猫たちも大切な社会の一員とみなすインクルーシブな(=あらゆるものが孤立したり、排除されたりしないよう援護し、社会の一員として包み、支え合う)本当の意味での「人と動物が共生する社会」、そこでは、欧米などの動物保護の取組みが進む国や地域のように、犬や猫を飼おうとするとき、ごくあたりまえに、保護犬・保護猫を引き取ることを選択肢の一つに考える、そのような社会であって欲しいと願いますし、それは決して実現不可能なことではないと思います。そのためには、これからどのようなことが求められてくるでしょうか。
保護犬・保護猫の存在は、以前に比べると随分と知られるようになってきています。それでも、実際に犬や猫を飼おうと考えた時に動物愛護センターや愛護団体から犬や猫を引き取ることを考える人は、まだ決して多いとは言えません。保護犬・保護猫が自分から遠く離れた存在に思えて、心理的なハドールがあるのかもしれません。保護犬・保護猫を引取り、家族として迎い入れることが、決して特別なことではないということを、より多くの人に知ってもらうことが大事なことのように思います。
犬や猫を家族として迎い入れて一緒に暮らすのは、それによって飼い主と犬や猫たちがともに幸せに過ごすために他なりません。そのためには犬や猫と暮らすことがどういうことなのか、日常生活への影響も理解したうえで、責任を持って生涯世話する覚悟が必要です。ですから、保護犬・保護猫であっても、その犬や猫の特性と飼い主の暮らしや将来を考えて、ふさわしい飼い主に引き取ってもらうことは欠かせないことです。
高齢の飼い主が亡くなったり、健康上の理由から飼えなくなることが問題となっていますが、高齢者が(あるいは、近親者が高齢者のために)ペットショップ等から子犬や子猫を買うことには慎重であるべきでしょう。それでも、人と動物が共生する社会を実現するためには、動物を大切に思う人であれば、どんな人も取り残すことがあってはならないと思うのです。総人口の4分の1を占める60代、70代の人のうち、およそ10人に1人が犬または猫を飼っており、この割合は50代以下の世代と大きな違いはありません。高齢化社会が進む中、高齢者と犬猫が安心して暮らすためには、飼い主としての備えだけでなく、万が一の時にセーフティーネットとなるしくみを社会の中で築いていくことが必要なのだと思います。そしてそのようなしくみがあれば、飼い主として相応しい高齢者に対しても譲渡を広げていくことができるのではないでしょうか。
コロナ禍で人々の価値観が変わる中、ありたい未来の姿を想像し、そのための一歩を踏み出すときに来ているように感じます。決して遠くない未来に、家族として迎い入れる犬や猫を探す場として、自治体や愛護団体による譲渡の場がペットショップに代わる存在となっていくと良いですし、人であっても動物であっても、困難に直面したものたちに手を差し伸べる共助のしくみが広がる、そのような社会になっていくよう目指せればと思います。