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高齢者が保護犬を迎えること

何か考え事をしている時など、傍らにいる愛犬に向かって、つい、話しかけてしまうことはないでしょうか。そんなとき彼らは、言葉が通じなくても、こちらの目を見つめながら、それを黙って聞いてくれます。
一緒にいるときにリラックスしていたり、心を許して寝ていたり、外出から帰った時に駆け寄ってきたり、そのように同じ時間を共有していると、心が通じ合っているように感じます。彼らも同じように感じていればよいなと思ったりします。見つめあったり、触れ合ったりすることによって、飼い主と犬の両方にオキシトシンが分泌され、お互いの絆が深まるのだそうです。それは飼い主にとっても、犬にとっても、理想的な関係と言えるでしょう。

一方で、毎年、飼育放棄などにより飼い主から見放されてしまった犬や猫たちが、全国の保健所に収容されています。環境省によると平成30年度に全国の動物愛護センター等の行政施設が引き取った犬・猫の数は91,939頭でした。このうち、約15%にあたる14,176頭は飼い主からの引取りです。残りの77,763頭は所有者不明ということですが、もとは飼われていた犬・猫、あるいはその子供のはずです。家族として迎い入れ愛情を注いでくれる飼い主と巡り会えた犬と、そのような飼い主に巡り会えなかった犬とでは、運命は大きく違ってきてしまいます。犬が幸せに暮らせるかどうかは飼い主である人間次第なのです。

なによりも大事なことは、最期まで愛情をかけて世話をすること。
犬を大切な家族と考える飼い主であれば、それは当然のことであり、見放すなんてことはありえないと考えているはずです。犬を飼おうとする人たちが皆、そうであって欲しいですし、特に、飼い主に見捨てられた経験をもつ保護犬には、そのような飼い主と出会って欲しいと願わずにはいられません。

犬を大切な家族と考える飼い主は、犬を飼った経験がある高齢者の中にも多くいると思います。そうした高齢者の中で犬をまた飼いたいと思う人が、ペットショップで子犬を買うのではなく、保護犬を引き取って家族として迎え入れることによって、より多くの保護犬たちを救うことができると思います。

高齢者が保護犬を迎える場合に大事なことは、飼い主の年齢と犬の寿命を考えて最期まで世話ができる年齢の成犬の中から選ぶことです。また、大きさ・特性・性格、必要な運動量など、飼い主に合った犬を選ぶこともとても大事なことです。

そして今後、高齢者への保護犬の譲渡を増やしていくためには、定期的に飼い主の家を訪問して相談を受けたり、日々のサポートや一時的な預かり、飼い主同士のコミュニケーションの場作り、飼い犬が病気になったときや老いた時の介護援助など、何かあったときにサポートを行うしくみを作っていく必要があると思います。加えて、飼い主に万が一のことがあった時には、同じような高齢者の人たちから引き取り手を探したり、保護団体や動物病院を通じて新しい飼い主を探してもらうなどの仕組みがあれば安心できるのではないでしょうか。

一部の保護団体や動物病院では、高齢者がペットを飼いやすくするための取り組みを行っているところもありますが、まだ多くありません。だとしたら、そういったサポートの仕組みを作り、保護団体と連携していくという方法もあるのではないでしょうか。これから少子高齢化が加速していく日本では、このような仕組みを作り、保護犬の高齢者への譲渡に取り組んでいくことを考えるべき時期に来ていると思います。

公園の紅葉も進んできました

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