動物愛護法
今回は、法律の話です(、、、そうと書くと、なんだか難しそう、自分にはあまり関係ないな、と思うかもしれません。法律の条文を日ごろ目にすることは、ほとんど無いですし、専門用語が使われていたり、独特の言い回しをしていたりして、決して読みやすいものではありませんから)。
犬や猫などペットに関する法律には、代表的なものとして、動物愛護法、狂犬病予防法、ペットフード安全法などがありますが、今回は、動物愛護法についてです。具体的な規定の内容というよりも、その成り立ちや目指すものについてご紹介したいと思いますので、少しだけお付き合いください。
正式な法律の名称は、「動物の愛護及び管理に関する法律」といいます。略して「動物愛護法」とか「動物愛護管理法」と呼ばれることが多いです。(本文では以下、「動物愛護法」と呼びます。)
動物愛護法が制定されたのは、1973年(昭和48年)ですから、今からちょうど50年前のことです。動物関係団体による20年以上にわたる働きかけや、イギリス(当時、イギリスは日本への犬の最大輸出国でした)など外国からの、日本に動物保護法が制定されていないことへの批判が契機となって、国会で当時の与野党4党による議員提案の法案が審議され、制定されました。
その後1999年(平成11年)に大幅な改正が行われましたが、その際に、施行後5年を目途として施行状況について検討することが決められたことから、その後も定期的な見直しが行われています。
1999年の改正後、これまでに4回の改正が行われていますが、最後の改正が2019年(施行は2020年)ですので、すでに次回の改正に向けた議論が始まっています。
多くの法律は、その目的とすることを最初に示していますが、動物愛護法では、第1条で以下のように規定しています。
第1条
この法律は、動物の虐待及び遺棄の防止、動物の適正な取扱いその他動物の健康及び安全の保持等の動物の愛護に関する事項を定めて国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養*に資するとともに、動物の管理に関する事項を定めて動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害並びに生活環境の保全上の支障を防止し、もつて人と動物の共生する社会の実現を図ることを目的とする。
* 涵養(かんよう):自然に水がしみこむように、徐々に教え養うこと。だんだんに養い育てること。(精選版 日本国語大辞典)
この第1条は、2012年に改正されたものですが、このように「人と動物の共生する社会の実現」を目的としたことは、非常に重要な意味を持っています。この言葉が入ることで、人間と動物のための法律であるとも考えられるからです。
日本の動物保護に関する法律は、欧米と比べてとても遅れているという声主よく耳にします。確かにそういった面があることは否めないですが、第1条に掲げられている目的からわかるように、この法律が掲げる基本理念は、日本だけでなく、欧米を含めた世界中で目指すべきものでしょう。
時々、ニュースで報道されるように動物の虐待や遺棄などの事件は、残念なことに未だ、後を絶ちませんが、大切なことは、動物愛護法が掲げる「人と動物の共生する社会の実現」という目的を強く意識して、動物愛護や動物福祉に十分に応えられていない部分を継続して見直し、より良い法律としていくことなのではないでしょうか。