犬について

本のご紹介~羆撃ち(くまうち)

以前、読んだ本を読み返しました。羆撃ち(「くまうち」小学館文庫2012年2月8日発行)という本です。この本は、北海道標津でプロのハンターとして生活する久保俊治さんが、猟師として生きてきた半生を綴るノンフィクションです。厳しくも美しい北海道の山々の自然とその中で生きる野生の動物たち、それを追う猟の様子を極めて繊細に描くことによって、読み手はあたかもその場にいるような感覚にさせられます。久保さんの研ぎ澄まされた五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)には、大自然の中に身を置くことで人の感覚はここまで鋭くなるものなのかと、驚きを隠せませんでした。人は、知性によって快適で便利な社会を作り上げてきましたが、代償としてこのような鋭敏な感覚を失ってしまったのかもしれないと思いました。

そして、この本の最大の魅力は、久保さんのアイヌ犬(北海道犬)フチへの深い愛情が溢れているところです。フチは久保さんによって仔犬の時から猟犬として育てられました。他に頼るもののない厳しい大自然の中の猟という共同作業によって、久保さんとフチとの間には、身振りや言葉を介すことなく通じ合う唯一無二の関係が築き上げられていきます。フチを狩猟に連れだした最初のころは、獲物の存在を察知した久保さんは、手ぶりや小さな声で「行け」の合図を出していましたが、やがて自分の役割を理解したフチには言葉で合図する必要もなくなります。久保さんが、「自分の心に確信を持った瞬間、それまで私の顔を見つめていたフチは、スルスルと藪に消えていく」までになるのです。人と犬が一つの目標(ゴール)を目指し、共に進んでいく、遥か昔の狩猟時代に始まり、きっと人と犬はこのようにして絆を深めてきたのではないでしょうか。

この本で語られる久保さんとフチのそんな関係は、これまでに読んだ犬を主人公とするどんな小説よりも鮮烈な印象を与えてくれました。特に日本犬好きの人にはたまらない本であること間違いなしです。

今回は登場しませんでしたが、今月で6歳になります。
春はもうすぐ!

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